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教員著書刊行情報

  • 2015-09-14 (Mon) 9:04

日本語学・日本文学コース担当 平野芳信教授が執筆にかかわった図書が刊行されました。

谷崎潤一郎全集 第13巻 黒白、卍(まんじ)ほか 2015年8月

tanizaki

<書籍データ>
* 四六判上製・函入り: 559ページ
* 出版社: 中央公論新社(2015/08/06)
* 言語: 日本語
* ISBN: 9784124035735

<筆者からひとこと>
 本書は、日本近代文学界における文豪の一人谷崎潤一郎の没後50年と中央公論新社創業130年を記念して、四半世紀ぶりに編纂された「決定版全集」の一巻であり、私は「解題」を担当致しました。
 文豪という評価に恥じず、谷崎潤一郎の全集(選集)はこれまで7種類あります。しかし、今回「決定版」と銘打ったのは、これまで一度も付されたことがなかった「解題」を、谷崎研究者20余名が分担執筆したことに由来します。
 「解題」は、大まかにいうと収録された小説やエッセイの来歴、発表経緯等の書誌的事実を詳述した後、27年前に編まれた直近の「愛読愛蔵版全集」を「底本」とし、雑誌や新聞に初めて発表された「初出文」と最初に単行本に収められた「初刊文」の3種類の本文を比較し、その表現上の異同を「校異」として示したものです。
 私が担当した第13巻は、芥川龍之介との間で有名な「小説の筋論争」を惹起した『日本におけるクリツプン事件』や代表作『卍』を含む小説が4篇、単行本初収録の2篇を含む14篇のエッセイ等、さらには『卍』の雑誌「改造」掲載初出文(「その一」〜「その十四」)で構成されています。
 『卍』という小説は、日本だけではなく海外でも何度か映画化された人口に膾炙した作品ですが、実は雑誌に最初に発表されたものと現在文庫本や単行本で読むことができるものの間には、かなりの相違があります。
 一般によく知られている『卍』といえば、語り手が関西弁で自分の過去を語りかけるという体裁をとったものですが、最初に「改造」という雑誌に発表された時点では、共通語が使われていたのです。しかも、連載が進むに従って、少しずつ関西言葉が流入しはじめ、単行本化に際して、全体が関西言葉で書き換えらえたという興味深い成立過程をもつ作品なのです。
 興味深いという表現を使いましたが、その過程を「校異」としてまとめる今回の作業は、正直なところ、もう二度とこのような経験はしたくないといっても過言ではないほど困難なものでした。これまで、「校異」が作成されなかった理由がよく分かりました。
 同じようなことは『黒白』(「こくびゃく」と読みます。)にもいえます。この小説は「大阪朝日新聞」と「東京朝日新聞」に連載された、いわゆる新聞小説なのですが、なんと「大阪」版と「東京」版で表現や表記が微妙に異なるのです。その「校異」を示す作業も一種の苦行以外のなにものでもありませんでした。
 いまは、私の担当した第13巻が無事に出版されたということに、喜びよりも安堵の気持ちの方が強いのです。
 何年後になるのか分かりませんが、次に谷崎潤一郎全集が刊行されるときは、もう紙に印刷するという形態ではなく、ネット上の電子媒体になっていると予想されます。図書館等で、決定版谷崎潤一郎全集を眼にされた方は、是非一度手にとってお読み戴きたいと思います。

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