宗教学実習:「エヴァンゲリオンと日本刀展」(岩国市)と「白壁の町並み」(柳井市)

今回の実習では、岩国美術館の「エヴァンゲリオンと日本刀展」と、白壁の町・柳井市を訪れた。

まずエヴァンゲリヲン展について。「エヴァンゲリオンと日本刀展」は2016年5月14日(土)~7月10日(日)まで、岩国美術館で展示されている。

私もエヴァのファン、といっても劇場版はテレビ放送で、アニメ版はTSUTAYAで借りて見ている途中という“にわか”なのでせいぜい下手なことを書いてファンの逆鱗に触れないように気をつけよう(映画とアニメで表記が違うことを最近知ったが、ここではアニメ版の表記で)。

入り口には早速レイとアスカの等身大フィギュアが置いてあった。音声案内をつけると、登場人物の一人・葛城ミサトの声で案内してくれる。受付前では、コラボ作品の刀を制作した刀匠の方がネームプレートを彫っていた。

コラボ作品のほとんどは写真をとることができた。右の写真は綾波レイをイメージした刀である。刀身はもちろん、鮮やかなさやにも目が行ってしまう。また、本物の刀身を持つことができたが、両手で持つのがやっとだった。キャラクターをイメージした作品はもちろん、作中でエヴァが使用する武器を模した作品もあった。

「ロンギヌスの槍」もその一つである。近くで見ると木目のような模様があるのがわかる。数種類の金属を層状に重ねて鍛えてできる模様だという。ただ、重すぎてとても使うことはできなさそうだ「かっこいいけど使わない言葉」に「武器」と答えた人がいたことを思い出した。

次に白壁の町柳井について。駐車場を降り、少し路地に入るともう両側白壁だった。その日は曇りで過ごしやすい気候だったが、空の白と壁の白がマッチしていい雰囲気だった。途中至る所に金魚の提灯がつるしてあったが、ゆるキャラか何かだろうか。道端にふわふわの猫がいた。

建物には食堂、カフェ、文具屋、煎餅屋、時計店などがあった。そのうち文房具店には、先ほど外にたくさん吊るしてあった金魚のグッズがたくさん売っていた。他にも売り物ではないが、昔の文房具が展示されていたので、文房具好きの私は写真を撮らせてもらった。

白壁の町並みを抜けると、ごく普通の市街地だった。そこには町並み資料館、オルゴールの館グリムなどがあった。

オルゴールの館は、一見すると時計台のようなレトロな建物だ。「館」といっても一般客が入れるようなドアは見当たらず、代わりにオルゴールらしき機械が設置されている。百円玉を入れると、「ふるさとの夕暮れ」というどこかで耳にしたことがあるような音楽が流れだす。こんな募金箱を作ったらお金が集まるだろうなと思った。

他にも、白壁の醤油蔵などがあった。このあたりは醤油づくりが盛んなようだ。蔵は意外と広くて薄暗く、醤油の香が立ち込めていた。木製の大きな樽がいくつも置いてあり、上から製造途中の醤油を見ることができた。

気づけば「こんなところに住めたらいいな」などと話していた。「住めば都」とはよく言うが、私は東京のような都会にはあまり住みたいと思わない。旅行などで何度か行ったが、その数日だけでくたくたに疲れてしまう。アスファルトと白壁、同じ人工物でも、こうも印象が違うのはなぜだろう。<文:宗教学研究室3年次・一ノ瀬千優>

5月28日、山口市岩国美術館を訪れ、7月10日まで開催中の「エヴァンゲリヲンと日本刀展」を鑑賞した。「エヴァンゲリヲンと日本刀展」は、元々岡山の備前長船刀剣博物館で企画展として開催されたもので、それが巡回展となっている。そういった経緯から「エヴァンゲリヲンと日本刀展」はその企画運営をテレビせとうちが担っている。また、テレビせとうちは開局以来ずっと日本刀企画に力を入れており、日本刀に非常に造詣が深い。今回の会場である岩国美術館は「日本の優れた伝統文化・芸術品、そしてその伝統文化が育んできた 豊かな精神性を、皆様にお伝えするために誕生しました」と公式ホームページに記載のある通り、「生死の文化」と題された刀や兜、火縄銃といった武士の道具から「生活の文化」と題された水差しや茶碗、鞍などの生活道具までを、当時の人々の精神を表す美術品として数多く所蔵・展示している。

今回の実習では時間の都合上、常設展示をじっくり鑑賞することはかなわなかったが、兜の展示を見るにあたっての心構えとして以下のようなことが記されており、非常に印象的だった。曰く、“兜の形には意味がある。兎を模したものならば「注意深く周囲に耳を傾けなさい」、横歩きしかできない蟹を模したものならば「怖気づいて簡単に後退するな、かといって無謀に前進もするな」といった風に、兜はそれぞれに意味を持っている。これらのメッセージは現代の我々にも通じるところがある。そういった気持ちでこれらの兜を鑑賞し、自らの生活に当てはめて考えてみてほしい。”美術品を鑑賞することには昔の人々の生活や精神に思いを馳せるほかに、今の自分自身を見つめなおす意味もあるのだと感じた。

「エヴァンゲリヲンと日本刀展」のコンセプトは「エヴァンゲリヲンの世界(その中でも「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の世界)を日本刀で表現する」ことである。劇中に登場する武器や、劇中のキャラクターをイメージして作られたオリジナルの日本刀などが展示されている。なかでも目を引くのはやはり、全長3.32メートルと非常に大きい「ロンギヌスの槍」である。すべて金属製であり、柄の部分もねじり合わせてつくられている。この制作過程は動画で紹介されており、材質選びからねじり合わせの工程まで、こだわりや苦労を感じさせられる。

ポスター等に使われているイラストでキャラクターが持っている刀は、それぞれをイメージして作られた実際の日本刀を描いたものである。中でも強いこだわりを感じたのは式波・アスカ・ラングレーをイメージして作られた「弐号機仕様 短刀<式波・プラグスーツ>」。刀身にアスカが透かし彫りされており、通常以上に繊細な作業を要求されただろうと素人目にも見て取れる。

他に、エヴァンゲリヲンの企画書・設定資料や新劇場版の複製原画の展示もされていた。企画書には、エヴァンゲリヲンをどういった層向けのアニメーション作品としたいのか、エヴァンゲリヲンという作品を通して観るものに何を伝えたいのか等について書かれており、制作者の熱意を強く感じた。また、エヴァンゲリヲンについての知識を持っていなかったため、視聴したことがあれば感動もひとしおだったろうに、と少し残念にも思った。

今回、前述した「兜の展示を見るにあたっての心構え」を心に留めて「エヴァンゲリヲンと日本刀展」を鑑賞したのだが、日本刀のまっすぐな刀身と、従来の日本刀のイメージを覆すような配色やデザインを見て、「すらりと一本筋の通った人間でありたい」、「固定観念にとらわれすぎない様にありたい」と感じた。自分自身を見つめなおすよいきっかけになったと思う。<文:哲学・思想コース2年次・船倉榛名>