マンガの話

研究とは全く…ではないけれどほとんど関係ないのですが(いいのでしょうか)。

僕はマンガが昔から好きでして、実家にあったもの(出身が熊本なので、2016年の地震で家がほぼ壊れてしまい、修復時に廃棄してしまいました)や、山口大学着任時(引っ越し時)に売ってしまったものも含めると数千冊マンガを所有していました。

ということで、このブログを使って読んだマンガの紹介なんかもしていきたいと思います。

今日紹介するのは、『淋しいのはアンタだけじゃない』(←アマゾンにリンクしています)です。

作者の吉本浩二は、勝新太郎の伝記マンガや、手塚治虫が『ブラック・ジャック』を描き上げるまでの過程を追ったマンガなど、取材に基づいたドキュメンタリー的なマンガをよく描いてきた人です。その吉本浩二が今回題材にするのは、佐村河内守さん(と聴覚障害・聴覚障害者)で、「聞こえない」ということがどういうことか、丹念な取材を行いながら描き上げています。「聞こえる」「聞こえない」を文字と絵で表現するってなかなか難しいことだと思うのですが(そのため音楽を扱ったマンガ、たとえば『BECK』とか『のだめカンタービレ』もなかなか苦労と工夫をしていたように思いますが)、「聞こえない」ことを、できるだけ実際の当事者の感覚通りに描こうとしているマンガです。先日発行された3巻が最終巻で、最終的には取材対象である佐村河内さんと意見の相違が生じてしまうのですが、そういうところも含めて、“人に話を聞いて何かを書くということ”を考えさせられるマンガでした。また、佐村河内さんはあれだけマスメディアに取り上げられた方ですし、そういった方を対象にマンガを描くのもなかなか勇気がいる行為だとは思う(既に示されている佐村河内さんのイメージに引きずられてマンガを読まれてしまうでしょうし、佐村河内さん自身も取材されることへの抵抗感があるでしょうし)のですが、率直に佐村河内さんと向き合いながらマンガを描いているなと思わされました。研究室に3巻まで置いてあるので、関心がある人はどうぞ。