人文学部人文学科 哲学コース 美学・美術史 村上 龍 MURAKAMI Ryu
観るのが好き、観たものについて語るのはもっと好き、そんな人を待っています。
分野 | 美学、近現代フランス美学史 |
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担当授業 (学部) |
美学・美術史概論(美学) 美学・美術史特殊講義(美学) 美学・美術史講読(美学) 美学・美術史基礎演習(美学) 美学・美術史発展演習(美学) 美学・美術史卒論基礎演習(美学) 美学・美術史卒論発展演習(美学) 感性と表現(現代文化の解読) 哲学と人間 |
担当授業 (研究科) |
芸術論(美学) 芸術論演習(近代美学) 芸術論演習(現代美学) |
主な研究内容
「美学」という学問分野の名前に耳なじみのある方はたぶんとても少ないでしょう。「美学」の教科書(そんなものがじつは何冊も存在します)にはたいてい、「美学は感性・芸術・美を対象とする哲学の一分枝として一八世紀中頃の西洋で成立した」と書かれています。つまり「美学」とは、①感性的な事象(五感で感知できるもの)、②芸術およびその周辺の事象(たとえば競技場内でのイベントなど)、③広い意味での美的な事象(崇高なものや滑稽なもの、はたまた醜いものまで含め)、これらの時に相重なり、時に相重ならない諸事象について(西洋)哲学的に考える学問だ、というわけです。私自身はとくに、近現代フランスの美学的な思索を掘りおこすことを専門的に手がけています。
学問のことなど
まだ10歳にも満たないころ、Aさんはある若手女優の主演映画を観ました。劇場で観たのかTVで観たのか、そのあたりの記憶は彼自身にももはや定かではありません。ただひとつ、彼が鮮明に覚えているのは、お目当ての女優の顔をはっきり目にとらえることができず、どうにもすわり悪く感じられたことです。この違和感がじつは、当の作品を手がけた監督に特有の撮影手法(長回しやロング・ショットの多用)に由来するものだ、という点にAさんが思い至るまでには、その後10年ほどを要しました。以来Aさんは、映画を観る、観た映画について語る、映画を自分で撮ってみる(当時はまだ8ミリフィルムというアナログ媒体が主流でした)、そうした活動に熱中し、果てはその延長線上で、それら活動について理論的に考察する「美学」なる学問分野に身を投じることとなりました。さて、以上の事例から引きだすべき教訓があるとすれば、それは他ならぬ居心地の悪さ、違和感こそがおよそ学問の出発点をなす、ということでしょう。してみると、どうやら学問とは、ネガティヴな要素をポジティヴな要素に転化させる逆説的な営みであるようです。そのように言わば悦ばしい逆説を、皆さんにもぜひ体感して頂ければと願っています。