平成22年異文化交流研究施設講演会『忙しい街とのんびりした街の融合』

平成22年異文化交流研究施設講演会『忙しい街とのんびりした街の融合』

講師  ミュンヘン大学教授エーヴェリン・シュルツ先生

人文学部言語文化学科1年の鈴木太龍です。 先日お願いがありました、講演会の感想ができあがったので、添付します。 いろいろと拙い部分があるかと思いますが、参考にしていただけるとさいわいです。 以下、本文。  平成22年11月12日に、エーヴェリン・シュルツ教授の講演会に参加しました。 演題は『忙しい街とのんびりした街の融合〜文学からみた都市再生のヒント〜』とい うものでした。主な内容は、東京を散策する様子を書き記した文学作品(教授はこれ を散歩文学と呼ばれていました)などを参考にしながら、人々のコミュニティ空間と しての「路地」を考える、というものでした。  講演ではまず、現在の都市空間での問題点をまとめました。その上で、都市再生の ヒントとして挙げられたのが、日本型の都市空間、つまり路地裏の再生でした。理想 の都市空間としての路地は、柔らかく人間性あふれる雰囲気が漂っており、人々のく らしの場としてあるものです。それは都市空間に現れた、いわば日本版スローシティ なのです。現在では「忙しい街」の代表として考えられがちな東京ですが、東京を舞 台とした文学を見る限り、かつては「のんびりとした街」としての側面もあったよう です。例えば永井荷風の『日和下駄』には、路地がロマンティックな表現で描写され、 当時の東京の中にのんびりとした別世界があったことを描いています。このように、 「忙しい街」と「のんびりした街」の融合は可能であり、都市という空間の中で孤立 しがちな人々にとって、そこは人との憩いの場となるかもしれません。  現在の日本では、人と人とのつながりが薄くなってきているといわれています。「 路地」の持つコミュニティ空間としての雰囲気は、その問題を解決する糸口になるか もしれない。そんな希望を持つことができる講演でした。

                       山口大学人文学部言語文化学科1年 鈴木太龍