4年生の就活体験談(2)

今回は黒田さんの体験談を掲載します。

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私が採用された企業は、築地書館という小規模な出版社です。出版社というと大手のイメージがありますが、社員5人程度の本当に小さな企業です。

ただ、自然科学系のとても面白い本を出版している企業で、売れ筋の本なら『先生、シマリスが蛇の頭をかじっています!』という奇抜なタイトルから始まる先生シリーズや『狼の群れと暮らした男』などの本を出版しています。面白いので是非機会があれば読んでみてください。さて、宣伝はこれくらいにして、本題に入ります。

黒田さんの体験談

黒田さんの体験談

そんな小規模な企業ですから、そこのHPを見たときも今年度の新規採用を募集しているかどうかもわからない状態でした。その企業が、というか出している本が好きだった私は諦めきれずに採用があるかどうか尋ねるメールを会社に送りました。しかし、一ヶ月待ってみても返事が返って来ることはなく流石に諦めようかと思いました。

私が幸運だったのはここからです。やっている人も多いでしょうから説明は省きますが、ツイッターってありますよね? あれに何気なく呟いた「築地書館から返事こない」という呟きを偶然企業の広報担当の人に見つけていただき、ツイッターを通じてどうしたのかと返事がきました。たぶん向こうは何かクレームだと思ったのでしょう。そのあと事情を説明すると社長直通のメールアドレスを教えていただき、再度同じメールを送りました。

しかし返事は募集していないとのこと。ただ、興味があるなら一度企業見学に来ないかと誘っていただきました。二つ返事でそれを受け、五月に見学に行かせてもらうことになりました。

そこから私は他の企業の面接を受けながらも手当たり次第に築地書館の本を読みあさりました。大手ではないのでそこまで大量の本を出しているわけでもありませんが、最近の本や売れている本だけでなくなるべく幅広く読みました。

そして迎えた企業見学の日、私は仕事内容などについて説明していただきつつ築地書館の改良できる点を先方に可能な限り伝えました。書店でアルバイトをしていた経験からポップが地味だなどそんなことをつらつらと。失礼かとも考えたのですが、熱意は伝わるでしょうし、そもそも入社したい理由が、もっと売れて欲しい、多くの人に読んでほしいという思いだったので。それが功を奏したのか、その企業見学の際に、一ヶ月間インターンシップに来るかと誘っていただきました。

インターンシップでは書店向けのポップ作りを任されたり、書店への電話営業、社員の方について営業回りに行ったり、主に私の希望していた営業関係の仕事をさせて頂きました。

その後、インターンシップの最終日に来年から働くかと打診されて現在に至ります。

私が自分の体験から皆さんに伝えたいことは企業を知る努力をして欲しいということです。もちろん、すべての企業について調べて勉強することはできません。でも、自分のいきたい業種、いきたい企業だけでもいいのでやってみてください。その企業の問題点と改善点を考えるだけでも先方に自分の熱意を伝えるには十分だと思います。

もちろん、それ以外の就活努力としてSPIや面接練習をすることも大切です。私もやっていました。ただ、その企業で自分がやりたいことやできることを伝え、なぜその企業で働きたいかを主張する上で、企業について勉強することはとても役に立つと私は思います。

皆さんの中にはまだいきたい企業がない人やどこでもいいから就職したいという人もいるでしょう。それは悪いことではありませんし、仕方ないことではあると思います。しかしこれから就職活動の中で是非いきたい企業を探してみてください。それを探すこと、そこを目標とすることはモチベーションをあげるためにも有益だと思います。きっとそれも立派な就職活動の一つですから。

さて、話は変わって出版という業種についての話をさせてください。皆さんの中で出版業界に行きたいという人がどれくらいいるかは分かりませんが、おそらく人気のある業種ですし、少しはいるでしょう。出版業界に興味のない人も参考程度に聞いてください。

これから先のことを考えるなら出版業界というのは先行き明るいとは決して言えません。読書離れや電子書籍化はこれからも広がっていくでしょうし、そもそも本というのは嗜好品であり、日常生活に必須なものではありません。景気が悪くなれば財布の紐も固くなって本を買う人は減っていくでしょう。実際、最近はどこの出版社も、利益が確約されている本でもないかぎり、初版であまり量を刷りません。それは売れなかったときの在庫を抱える余裕がどこの企業にもないということであり、昔ほど書籍が売れなくなったということでもあります。

でもそんな時代だからこそ、出版社はもっと面白い本を作っていかなければならないと私は考えます。妥協せず面白い本を作ることがこれからの出版社には必要だと思うのです。

さて、次は出版業界に行きたいって人向けの話をしますが。皆さんは出版社の主な仕事といえばどんな仕事を思い浮かべますか?

ほとんどの人が編集と答えるでしょうし、編集は出版社の花形です。ただ、編集の仕事というのは想像以上に大変な仕事です。締め切りに間に合わせるためなら例え女性であっても残業は当たり前です。とはいえ、それでも自分がこだわって作った本が書店に並び、売れるのを実感できる喜びはひとしおでしょう。

それともう一つ、営業という仕事もあります。出版社の営業というのは何をするのかと思われるかもしれません。営業は書店に直接行って自社の新刊や、流行に沿った既刊を置いてもらえるか、話をするのが出版社の営業です。書店に置いてもらえることは売り上げに直結するので、地味かもしれませんがとても重要な仕事です。

この二つが出版の大まかな仕事なのですが、私は本が好きな人なら是非営業を目指して欲しいと思います。本が好きな人なら誰でも持っている願望だと思うのですが、自分の好きな本をもっと沢山の人に知ってほしいと思ったことありませんか? 友達に本を貸して布教したり、おすすめを語り合ったり、そういうことをやっている人こそ営業に向いていると思います。自分の面白いと感じた本、もとい読んでほしい本を、書店の人にお勧めするのが仕事ですから。

ここまで長々と喋りましたが、最後に私の就活にあたっての心意気のようなものを言わせてください。

本命の会社に行くときは当たって砕ける勢いで行きましょう! なんとかなるときは、なんとかなります!

以上です。ご静聴ありがとうございました。