【教員著書刊行情報】橋本義則『日本古代宮都史の研究』

このたび、本学部歴史学講座、橋本義則教授による著書『日本古代宮都史の研究』が刊行されました。これに関連して9月に開催された、国際シンポジウムの内容とあわせてご紹介します。

1-1日本古代宮都史の研究・カバー再校・切り抜きS

橋本義則『日本古代宮都史の研究』
青史出版、2018年9月20日刊行
全506ページ(本文482ページ、索引24ページ、その他目次など14ページ)
定価 9,800円(税込10,584円)
ISBN-10:9784921145637  ISBN-13:978-49211456  ASIN:4921145636

【著者による内容紹介】

本書は、私にとって三冊目の論文集です。これまでに公刊した二冊の論文集、『平安宮成立史の研究』(塙書房、1995年)と『古代宮都の内裏構造』(吉川弘文館、2011年)は、平安宮の構造が宮都(みやこ)のどのような展開のうえにできあがったのか、また平安宮に至る内裏(天皇の住まい)の構造がどのような歴史的意義をもって生まれてきたのか、という観点から、いずれも平安宮を中心にまとめたものです。

しかし、本書は前二書とは異なり、日本の古代宮都史上に展開する「藤原」京(「 」が付けられているのは、いわゆる藤原京には固有の名前がなかったから、かりに藤原宮のあったみやこを藤原京と呼んでいるため、その事実を明示するため)平城宮・恭仁宮・甲賀宮(一般には紫香楽宮と呼ばれているみやですが、それは離宮であったとときの名前で、のちみやことなったときには甲賀宮とよばれました)・平安京の諸宮都について個別の問題を取り扱った論文など13篇を収載しました。ただ私の主たる研究関心が依然として平安京・平安宮にあるため、その過半は平安京と平安宮を対象にしています。

本書は全体を二部に分け、第一部は本書の題名でもある「日本古代宮都史の研究」とし、第二部は「律令国家・宮都と喪葬・葬地」として、いずれも題名にふさわしい論文を配列しました。第一部と第二部は分量的に均衡を欠いていますが、それは、第二部が本来さらに数本の論文を著したのち、それらをもって一書にまとめる予定であったのですが、種々の事情から本書に一緒に収めて公刊することとしたためです。

なお、本書の目次詳細は以下の通りです。
橋本義則『日本古代宮都史の研究』目次

 

【著者による関連シンポジウム内容紹介】

国際公開シンポジウム「東アジアの古代都城と葬地・墓葬」
開催年月日:2018年9月15日〜17日
会場:コンソーシアム京都キャンパスプラザ京都・龍谷大学大宮学舎

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今回のシンポジウムを開催した主体は、15年前、2004年に独立行政法人日本学術振興会によって私を研究代表者とした最初の科研費・基盤研究(A)「東アジア諸国における都城および都城制に関する比較史的総合研究」が採択された時に組織された研究団体「東アジア比較都城史研究会」です。したがって今年はちょうど研究会の15周年に当たります。東アジア比較都城史研究会では、次に掲げた表のように、2004年度以降、私を研究代表者とする4度の科研費採択によって、さまざまな国際共同研究を展開してきました。

東アジア諸国における都城および都城制に関する比較史的総合研究 2004〜2006年度 基盤研究(A)
東アジア諸国における都城及び都城制の比較を通じてみた日本古代宮都の通時的研究 2007〜2009年度 基盤研究(B)
比較史的観点からみた日本と東アジア諸国における都城制と都城に関する総括的研究 2010〜2013年度 基盤研究(A)
東アジアにおける都城と葬地の政治的・社会的関連に関する比較史的総合研究 2015〜2018年度 基盤研究(A)

例えば、特定のテーマを決めず、広く比較の視点から日中韓三カ国に加え、ベトナム・モンゴルなど東アジアの都城(みやこ、東アジア世界では広くみやこのことを都城と呼んでいます)とそれに直接関わる多くの問題について考えたり(第一期・第三期)、またテーマを絞り科研の研究期間に限って東アジア地域の都城のあいだで比較研究を行ったり(第二期=複都制(東アジア世界ではみやこが一つではなく、複数設けられることがありました)、第三期=遷都論と廃都論、第四期=葬地・墓葬)してきました。これまでの比較研究による研究成果としては、2010年に科研費のいわゆる出版助成を得、2011年3月京都大学学術出版会から刊行した『東アジア都城の比較研究』があり、今後も研究成果を論文集をはじめさまざまな形で世に問うていきたいと考えています。

東アジア都城の比較研究
橋本義則『東アジア都城の比較研究』
京都大学学術出版会、2011年2月刊行
全432ページ
(本文414ページ、カラー口絵8ページ、その他索引・目次など10ページ)
定価 8,400円(税込9,072円)
ISBN-10: 4876989907 ISBN-13: 978-4876989904

さて、今回のシンポジウムは、2015年度より4年間交付を受けた科研費・基盤研究(A)「東アジアにおける都城と葬地の政治的・社会的関連に関する比較史的総合研究」に拠って進められた国際共同研究の成果を、その最終年度に当り公開形式(研究者や専門の大学院生・学部生のみならず、一般の方にも広く公開する)で報告したものです。本シンポジウムを開催するに当たり、2016年度には韓国・首尓で8月26日に忠南大学校百済研究所の主管のもと国際シンポジウム「東アジア古代都城と墓域」を、また2017年度には中国・西安で8月27~28日の2日間、中国社会科学院考古研究所・陜西省考古研究院との共催で国際シンポジウム「古代东亚的都城与墓葬国际学术研讨会」(中国考古「“古代东亚的都城与墓葬国际学术研讨会”纪要」)を、それぞれ開催した上で臨んだ本国際共同研究の総括的なシンポジムでした。

韓国でのシンポジウムポスター
・中国でのシンポジウムポスター(↓)
中国シンポジウムポスター

報告者は本共同研究に関わった研究代表者・研究分担者・研究協力者全て19人からなり、うち7人は海外研究協力者で、中国から5名(中国社会科学院考古研究所2名・陜西省考古研究院2名・南京大学1名)、韓国から2名(韓国国立江華文化財研究所1名・忠南大学校1名)の構成でした。彼らの来日時期はちょうど関空が台風21号で被害を受けていたため、関空着の航空便を利用できず、7人は羽田・中部・岡山の各空港着便を利用して何とかシンポジウムに間に合いました。そのための彼らのご協力・ご努力には感謝の言葉もありません。

また、12人の日本の研究者の多くは日本の各宮都遺跡の発掘調査に関わってきた方々(中央大学・山口大学・三重大学・金沢学院大学・独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所・公益財団法人古代学協会、公益財団法人大阪市博物館協会大阪文化財研究所、大津市教育委員会・公益財団法人向日市埋蔵文化財センター・近畿大学・龍谷大学・太宰府市教育委員会各1名)です。現在大学所属の方も多いのですが、いずれの方も元々は宮都遺跡の発掘調査に深く関わっていた方々です。

報告者の皆様には事前に予定稿(発表内容を事前に論文などのかたちで作成したもの)を執筆いただき、全467ページ(本文463ページ、目次など4ページ)の充実した予稿集(予定稿を集めて一書としたもの、ただしあくまでかりのものであり、正式な論文は後日公刊を予定する)を作成することができました。しかし、それ以上に重要であったのは、これまで中国の考古学界では都城と墓葬・葬地について関連を考えるような発想や研究はなかったため、中国の研究者からこのような新しい発想や研究ができたとの感謝の言葉を複数の方からいただいたことです。今回のシンポジウム開催を通じて日中韓三カ国の都城研究が通時的(たて)および共時的(よこ)な二つの研究方向から進められることを期待したいと思います。

なお、シンポジウムの日程は以下の通りで、皆様の絶大なる協力のもと無事日程通り実施することができました。

国際公開シンポジウム「東アジアの古代都城と葬地・墓葬」

第1日 9月15日 10時〜17時30分 於キャンパスプラザ京都
〈中国・朝鮮①〉
10:15~11:45     劉 振東     汉长安城与墓葬
12:45~14:15     焦 南峰     西汉帝陵陵邑若干问题初探
14:20~15:50     銭 国祥     东汉洛阳城与帝陵的布局研究
15:50~17:20     張 学鋒     南朝建康的都城空间与葬地

第2日 9月16日 9時〜17時30分 於キャンパスプラザ京都
〈中国・朝鮮②〉
9:00~9:40         妹尾達彦     五陵制度の誕生
9:45~11:15       張 建林        唐代帝陵蕃酋像略说
11:20~12:00     小嶋芳孝     渤海の都城と葬地
13:00~13:40     田中俊明     高句麗の王都と陵墓
13:45~15:15     朴 淳發        百濟都城墓域의 比較考察
15:30~17:00     黄 仁鎬        신라 도성의 도시계획과 능묘역의 변천

第3日 9月17日 9時〜17時30分 於龍谷大学大宮学舎
〈日本〉
9:00~9:40         橋本義則     日本古代宮都と葬地
9:45~10:25       積山洋         難波京と葬地をめぐる予察
10:30~11:10     水眞彦         近江南部地域における古墳の終末
11:15~11:55     中島信親     長岡京近郊の墓と墓域
13:00~13:40     國下多美樹    平安時代葬地形成の背景
13:45~14:25     網伸也         初期平安京の山陵と葬地の展開
14:30~15:10     山中章         長岡京・平安京の陵墓・葬地
15:20~16:00     井上信正      大宰府の葬地と都市
16:05~17:00     小田裕樹      日本古代都城の成立と葬地・墓葬の展開[:en]このたび、本学部歴史学講座、橋本義則教授による著書『日本古代宮都史の研究』が刊行されました。
これに関連して9月に開催された、国際シンポジウムの内容とあわせてご紹介します。

1-1日本古代宮都史の研究・カバー再校・切り抜きS

橋本義則『日本古代宮都史の研究』青史出版、2018年9月20日刊行
全506ページ(本文482ページ、索引24ページ、その他目次など14ページ)
定価 9,800円(税込10,584円)
ISBN-10:9784921145637  ISBN-13:978-49211456  ASIN:4921145636

【著者からの内容紹介】

本書は、私にとって三冊目の論文集です。これまでに公刊した二冊の論文集、
『平安宮成立史の研究』(塙書房、1995年)と『古代宮都の内裏構造』(吉川弘文館、2011年)は、
平安宮の構造が宮都(みやこ)のどのような展開のうえにできあがったのか、
また平安宮に至る内裏(天皇の住まい)の構造がどのような歴史的意義をもって生まれてきたのか、
という観点から、いずれも平安宮を中心にまとめたものです。

しかし、本書は前二書とは異なり、日本の古代宮都史上に展開する「藤原」京(「 」が付けられているのは、
いわゆる藤原京には固有の名前がなかったから、かりに藤原宮のあったみやこを藤原京と呼んでいるため、その事実を明示するため)
・平城宮・恭仁宮・甲賀宮(一般には紫香楽宮と呼ばれているみやですが、それは離宮であったとときの名前で、
のちみやことなったときには甲賀宮とよばれました)・平安京の諸宮都について個別の問題を取り扱った論文など13篇を収載しました。
ただ私の主たる研究関心が依然として平安京・平安宮にあるため、その過半は平安京と平安宮を対象にしています。

本書は全体を二部に分け、第一部は本書の題名でもある「日本古代宮都史の研究」とし、
第二部は「律令国家・宮都と喪葬・葬地」として、いずれも題名にふさわしい論文を配列しました。
第一部と第二部は分量的に均衡を欠いていますが、それは、第二部が本来さらに数本の論文を著したのち、
それらをもって一書にまとめる予定であったのですが、種々の事情から本書に一緒に収めて公刊することとしたためです。

さて、本書の目次詳細は以下の通りです。