哲学と生物学:人文、理学部のSTEAM教育試行(交差授業)について

久しぶりのブログの更新になります。

STEAM教育については、以前このブログでも少し触れたことがありますが、山口大学でも共通教育だけでなく、専門教育にもSTEAM教育を導入する方針になっています。各学部がいろいろな計画を立てていますが、人文学部は理学部と共同で、分野横断、文理融合型の教育交流ができないかと模索中です。

それで、今年度は試行的に人文学部と理学部の一つの授業で「交差授業」というものをやってみました。具体的には、私脇條の「西洋哲学特殊講義(哲学)」と理学部の山中学部長の「動物生理学」の授業を同じコマ(月曜1,2限)に開講し、一日だけ(12/12)教員が入れ替わる、という形で実施しました。

テーマをできるだけ関連させるため、私の授業では「生物学の哲学」をとりあげて生物種について哲学的に考察しました。たとえば、「銅」というものは自然種で、自然種は宇宙のどこににあってもその種に属するものです。たとえば、遠い宇宙の惑星である金属が見つかって、その原子番号が29であればそれは間違いなく銅なのです。しかし、「ネコ」は生物種ですが、遠い惑星でネコと見分けがつかないような動物(宇宙ネコ)が見つかっても、それはネコなのでしょうか。宇宙ネコが地球のネコとは全く別に進化した(あるいは何らかの仕方で発生したり創造された)としたらどうでしょうか。受講生に意見を聞いても、「見分けがつかないなら、宇宙ネコもネコだ」という意見と「別に進化したんだから宇宙ネコはネコではない」という意見に分かれます。理学部での授業でもこのテーマを取り上げましたが、やはり学生の意見は分かれます。これは生物種が自然種なのか、それとも個別者(特定の発生系統の一部である)なのかという哲学的問題です。

哲学的な考察をする場合でも、「生物学の哲学」のような分野では、やはり専門の生物学者からの意見は不可欠です。今回の交差授業では、山中先生から生物学の研究を進めるために種の分類が果たしている役割についてお話をいただきました。人文学部の学生には非常に有益な機会になったと思います。

山中理学部長の授業

山中理学部長の授業

来年度も引き続き交差授業の試行を行います。今度は1,2回共同授業を実施することを検討しています。

人文学部長 脇條靖弘