人文学部で学んだこと(第10回):日本語学・日本文学コース4年生Jさん

在学生の視点から、人文学部で学べることをインタビュー形式で紹介してもらうコーナーの第10回目です。

今回は、日本語学・日本文学コース4年生のJさん(鹿児島県出身)です。


  • 山口大学人文学部に入るまで

――山口大学の人文学部を受験することに決めたのは、どういったことからですか?

私は幼い頃から“言葉”に興味を持っていました。私の地元の方言は、古語が多く残っていたり集落差ごとに方言が異なっていたりと、生活の中で自分の話す“言葉”に意識が向く機会が多かったように思います。また、社会系の科目が好きで、言葉と社会の関係についても関心がありました。その興味と同時に、私は高校時代「学校司書」という職に興味を持っていました。その職に就くためには、大学で図書館司書と教員免許の双方の資格取得をすることが有効なのではないかと考え、双方の資格取得ができることを条件に大学を探しました(ただし注意していただきたいのですが、学校司書の資格は現在では資格化されています。山口大学にあるのは司書養成課程であり、学校司書養成課程とは異なるので注意してください。詳しくは調べてみてください)。学びたい分野や環境と取得したい資格の条件が揃っており、ご縁があったのがこの学部です。

  • 人文学部で学んだこと

――なるほど。人文学部に入学後、特に学んだことについて、何が面白かったですか。また、それによって自分はどう変わりましたか?何か覚えていることを教えてもらえれば。

教授など先生方が書かれた論文に対して、学生である私でも論理的であれば意見を述べることができる、というのは非常に新鮮でした。私の受講していた日本語学の演習形態の授業では、自分で興味のあるテーマの論文を選び一人で一時間発表する、ということを行っていました。発表では適宜疑問や意見が出し合い、深化させます。当時私が取り上げたのは地元方言に関する論文だったのですが、論文の内容を要約し自分なりに見い出したその論文の問題点や改善点も合わせて発表しました。授業担当の先生から、地元方言話者ならではの指摘が出来ていると、高評を得ることができました。論文に書いてある内容を鵜呑みにするのではなく、一度自分の頭で考えて読む行為を用いて学ぶ、というのが、大学での学びと高校までの学びの違いのひとつかなと思います。

加えて大学で学んでいてより強く思うようになったのが、ただひとつの要素で構成されている物事はないということです。私は日本語学を専攻しているのですが、自分の研究テーマについて考える際に糧となったのは、日本語学や言語学の授業だけではありません。その言語はどのような社会の中に存在していて、どのような歴史を持つのか、どのようなものを言語で示す対象とするのかというように、言語と一口に表現しても多面性があることは明らかだと思います。社会学の講義などで伺った知識や考え方も、私の研究においての思考の中に生かされていたように思います。学びはつながっている、と強く感じました。

  • 卒業後の進路

――たしかに、学問・研究をやっていく議論の場では先生も学生も対等であり、自分で論を組み立てて自分の責任の下で発言するというのが、大学で学ぶ上で生じるある種の責任でもあり面白さでもありますよね。ちなみに卒業後の進路を教えてもらってもいいですか?

地元で公務員として勤務する予定です。

地元は方言を継承していこうという志向が強い土地なので、大学での自身の専攻が活きてくる日が来ると良いなと思っています。配属部署によって異なりますが、教員免許や司書の資格取得のために履修した講義の内容も役立つことがあるかと思います。司書養成課程においては特に、“公にサービスを提供すること”という観点にも触れてきたので、今後生かしていきたいと考えています。

  • 高校生に向けて

――いいですね。大学で学んだことを出身地に持ち帰って、出身地の人々にそれを何かの形で還元していってもらえるのは、こちらとしてもとても嬉しいことだと思います。最後に、山口大学の人文学部を志望している高校生に向けてメッセージをお願いします。

人文学に興味を持っている方の中には、理系分野の科目が嫌い・苦手という方も少なくないかもしれません。私自身日本語学専攻なのですが、数学的思考や理科的な構造理解も専攻分野を深めていくために欠かせない要素だなと感じています。自分のしたいことが見つかった時に、嫌い・苦手な科目を足枷なんかにしないで欲しいです。高校までの科目は自分の研究を深めていくためのツールと言えるくらいだと尚良いと思います。現時点で嫌いだったり、苦手だったりする科目を大得意・大好きになってとまでは言わないので、逃げ出さない程度には向き合っていて欲しいです。生かそうと思う気概さえあれば活かすことができるのが知識だと私は思います。

大学という場所は、充実させるもつまらなくするのも自分自身です。どう過ごすかは自分次第。せっかくなら、あなたのしたいことをぜひ叶えてください。


第10回目は以上です。Jさん、ありがとうございました。

今後も人文学部の在学生たちから、「人文学部ではこういうことが学べるよ」といったことを紹介していってもらう予定です。