卒業生がいかに親切で気前のよいものか

アメリカの大学の中には Switchboard というシステムを使っているところがいくつもあることを最近知り、人文学部にも何かこのようなものがあればいいかも知れないと考えるようになりました。たとえば、これはアルバータ大学の Switchboard のサイトです。

https://ualberta.switchboardhq.com/

形式は掲示板のようなものなのですが、「求めます」と「提供します」に限定したシステムであることが特徴です。参加者は大学によっていろいろですが、だいたい卒業生、学生、教員、スタッフ、保護者、関係者などがサインアップできるようになっています。求めと提供は具体的な行動に結びつくものだけで、ただの経験とか感想、意見などは書き込めないことになっています。

求められたり、提供されたりしているものは様々ですが、仕事やインターンシップ、アルバイトの求人、求職が一つの大きなカテゴリーになってます。仕事関係では、就活の面接に望む際のアドバイスとかもあります。すでに社会に出ている同窓生からの情報やアドバイスが得られるのは、学生にとって(あるいは卒業生同士でも)心強い助けになるでしょう。

やり取りされているのは他にもいろいろあって、住居や宿泊場所の提供とか、ボランティア活動、大学によっては物の売買も可能になっているところもあって「車売ります/買います」とか「家具を売ります/買います」が出てることもあります。「ベビーシッターをやります/求めます」も結構あります。「どうしてもうちの子が数学の微積ができないから、至急だれか家庭教師をやってくれないか」というような親からの求めもありました(すぐ見つかってました)。おもしろかったのは「〇〇の地域で結婚式をするんだけど、どこの店のウェディングケーキがいいか誰か知らないか」というような求めもありました。あるいは、「同窓生の文集を作ろうとしてるんだけど、〇〇年ごろにいたxx先生の思い出話を書いてくれる人いないかしら」というのも。

こういうのを見ていると卒業生、同窓生は本当にお互いに対して親切で、気前よくいろいろ世話をしてくれるものだと実感します。えてして、卒業生が大学、学部にしてくださる貢献といえば、まず寄付金のことが私たち大学側の人間の脳裏には浮かぶ傾向があるのですが、貢献は決してお金だけではなく、たとえ小さなことでもお互いの求めるものに自分のできるものを提供してくださることは何ものにも代えがたい、極めて大きな貢献なのだと気付かされました。

実は私はFacebookを放置していて、twitterはまったくやっていないような人間なのですが、IT技術の助けを借りてSwitchboard のような、お互いを信頼したコミュニティーの中で、kindness と generosity に基づいた実用的な情報交換のシステムを導入できないものかと、回りの人たちに相談しているところです。

 

人文学部長    脇條靖弘